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書き下ろし時代小説「首巻き春貞」脱稿間際

2017年05月10日

筆者初めての時代小説が脱稿間際になった。還暦をとうの昔に過ぎたいま、なぜ時代小説を書こうと思ったのか、についてひとこと書かせていただこうと思う。なお本文は小説の「あとがき」に記そうと書いたものでもある。

 

私は池波正太郎、藤沢周平、佐伯泰英、司馬遼太郎らのいわゆる時代小説のファンである。

最近はもっぱら肩を凝らずに読める佐伯泰英の作品をいくつか平行して楽しんでいる。それも何度も何度も繰り返してだ。

また近年視聴率が稼げないからとテレビの時代劇も絶滅状態のようだが、大岡越前や水戸黄門そして鬼平犯科帳、剣客商売などをよく見たものだ。しかし自分が時代小説を書くとは思いもよらないことだった。

それが2017年の春先、急に「書きたい」と思った。

まさしくいきなりストーリーやプロットが浮かび、主人公を初めとする登場人物たちが自然に自己主張し始めたのだ。

大げさに思えるかも知れないが本当である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分なりに分析するなら、良くも悪くもこれまで見聞きした時代小説は膨大な量でもあり、そうしたビッグデータが私の頭の中で何らかのディープラーニングの形を取り、自分なりに興味のあるストーリーやプロットを生み出したのではないかと思っている。

ともあれ何故か舞台は小石川養生所と決めた。

となれば主人公は榊原伊織と大岡越前となる(笑)。とはいっても基本は可能な限り史実に忠実でありたいと考えたし時代考証もこれまたできうる限りリアルなものにしたいという点が肝なので榊原伊織は史実通り小川笙船とし、他の本道や外科・眼科の医師たちも実在の人たちを配した。ただし主人公は得体の知れない風来坊を作り出し、ヒロインは尾張藩江戸家老の一人娘とした。勿論フィクションだ。

さらに尾張藩主やその背景に関しては史実に頼ったが、家老や登場人物は架空の名である。また南町奉行所の奉行、大岡越前は申し上げるまでもなく実在の人物だが、登場させた与力や同心たちの名はこれまた創作である。

 

さらに小石川養生所の開設に関わる問題のあれこれや町触れなどの時期については史実に基づいている。

養生所に入所すれば薬代は無料ながらその効き目を人体実験されるというまことしやかな噂が市井に蔓延し、入所者が集まらなかったことも実際にあったことだ。

 

しかしストーリーはあまり深刻な展開はせず、心安らかに読めるようにと考えた。それでなくても現実世界は過酷で無情なことばかりで納得出来ないことも多い。だからして小説の中までそうした深刻なあれこれを持ち込むのを由としなかった。しかし何らかのリアリティを求めるとすれば時代小説の魅力はやはり剣術の魅力に他ならない。

この点も多くの文献を参考にさせていただき、尾張柳生新陰流の名手である主人公を引き立たせるべく気を遣った。そしていくつか剣を振るうシーンもあるが、私自身居合いの真似事をしていることが意外と役にたった。とはいえ柳生新陰流の一端を主人公春貞に語らせているものの、あくまで筆者の勝手な解釈なので念のため。

 

考えたプロットの通りにシーンを決め、登場人物を決めると彼ら彼女らが自然に江戸の町を歩き回る様が手に取るように見える気がして愉快だった。

一番厄介だったことは自身が考えたストーリーに時代考証をマッチングさせることだったが、いかんせん、にわか仕立ての小説故不備も間違いも多々あろうかと思う。しかし虚の世界を作る面白さを知ってしまったような気がして些か困惑もしている。

 

ということで、本書はまさしく筆者自身が楽しんで執筆したものであり、文庫本換算で300ページほどになった。また筆者自身の視力の衰えも鑑み、活字は大きめにして縦書きで執筆した。

最後に、小説ではあえて説明していない事項も多い。例えば大岡忠相と主人公の出会い、岡っ引きの親分や「い組」の頭とどのように親交を持ったのかなどなどだ。これらを説明するとそれだけでページが増え、緊張感が間延びするように思えたのであえて次回作への布石と考えた。なお本時代小説を執筆するにあたり、後述のように多くの先達らの業績を参考にさせていただいた。

取り急ぎ極一部のページをサンプルとして載せさせていただくが、もし何らかの形で公開できたら、是非楽しんでいただければ幸いである。

ともあれ、楽しくも幸せな二ヶ月間であった。

 

■主な参考文献

・安藤優一郎「江戸の養生所」

・ディアゴスティーニ「週刊江戸 小石川養生所の開設」

・酒井シヅ「まるわかり 江戸の医学」

・青木歳幸「江戸時代の医学 名医たちの三〇〇年」

・菊池ひと美「江戸衣裳図鑑」

・江戸人文研究会「江戸の用語辞典」

・野火迅「使ってみたい 武士の日本語」

・山田順子「江戸の暮らしがわかる本」

・稲垣史生「江戸時代大全」

・大森洋平「考証要集 秘伝!NHK時代考証資料」

・人文社「切絵図・現代図で歩く 江戸東京散歩」

・立川博章「大江戸鳥瞰図」

・柳生宗矩/渡辺一郎「兵法家伝書 付・新陰流兵法目録事」

・柳生耕一平厳信「負けない奥義 柳生新陰流宗家が教える最強の心身術」

・村山知義「無刀の伝 柳生新陰流極意」

・新人物往来社「剣の達人一一一人 データファイル」

・人文社「江戸庶民の食風景 江戸の台所」

・大野恵造「江戸小唄総覧」

 

 

 

「首巻き春貞」表紙イメージ。クリックで数ページのサンプルがブラウザで開きます

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