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ネクタイ物語

2017年05月25日

 私が会社勤めをし始めた時代と現在では社会情勢が随分と違っている。しかし今でもネクタイはビジネスマンの象徴には違いなかろう。例え嫌々であっても。そして今朝も「どのネクタイを締めて行こうか?」と悩む人は多いに違いない。ネクタイ...それは男にとってなかなか厄介な代物なのだ。

 

■ネクタイとは何だ

 厄介なネクタイも現在ではかなり不要な職場が増えている。だからネクタイの嫌いな方はネクタイを求められない業界・職場へ就職することが理想だろう(笑)。ちなみに私が1989年に起業したMac専門のソフトウェア開発会社にしても無論普段はネクタイなど必要なかった。

 しかし現実問題として代表者兼営業マンの私は結局終始スーツとネクタイから縁が切れなかった。なにしろ相対するのは取引銀行や流通企業であり、さらに大手のメーカー各社と面談するわけでスーツ姿が一番の安全策だったからだ。

 現在は1人でささやかながら仕事まがいのあれこれをやっているが、当然普段はネクタイと無縁だ。したがってたまにオフィシャルな場所へ向かおうとネクタイを締めるときがあるとあれほど手慣れていたはずのアイテムが息苦しく窮屈に思えて不快でたまらない(笑)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて昨今は女子校の制服にもネクタイが採用されていると聞くがもともとは男子用のものであり、洋服の襟や首の回りに巻いて前で結ぶ帯状や紐状の飾りである。

 2世紀のはじめにローマの兵士が防寒のために首に布を巻いたのがルーツとされるネクタイ。そのネクタイとはneckとtieの複合語だそうだが、ネクタイとよばれるようになったのは1830年代以後のことで、それ以前はクラバット(cravat)と称していたという。まあはっきり言ってネクタイはまったくの装飾品であり、日常他に役立つことはない。

 日本へは嘉永4年(1851年)、ジョン万次郎が帰国した際に持ち帰ったのが最初とされる。ところでネクタイと一言でいっても「アスコット・タイ」、ひも状の「ウェスタン・タイ」、「蝶ネクタイ」そして現在もっとも使われているタイプの「フォア・イン・ハンド」などに分類されるそうだが、ここでは一般的なネクタイに絞って話を進めたい。

 

■ネクタイは自己主張のアイテム?

 私が就職したとき、新入社員研修を終えて配属された当時の職場は今の学校より服装に関してうるさく干渉された。「女性のソックスの長さがどうの...」とか、カラーシャツはOKでも「ピンク色のシャツはダメ」などと言われ、反発した私は数回人事部に呼ばれ注意を受けた経験がある。そういう時代だった...。

 しかし私も若かったし反抗的精神も旺盛だった。今思えばやくざまがいに見える大柄縦縞のスーツや上下真っ白に近いようなスーツなどを着て通勤していたのだから会社も困ったことだろう。ともかくそうした時代にも一番気を配っていたのがネクタイの存在だった。

 

 毎日違うスーツを着ていけるほどの数を持っていないのだから日々自分の存在をアピールするにはネクタイで目立つくらいしか方法がなかったのかも知れない。とはいえ給与が数万円のサラリーマンにとってまともな物を一本購入すること自体が大変だった。それでも私は友人と示し合わせ、給料日の後には必ず池袋・西武百貨店のネクタイ売り場に出向くことにしていた。

 当時私たちが好んでいたブランドはルイ・フェローだったが、生地はイタリア製でも縫製が日本だったらしく一本3,700円程度で売っていた。

 

 また嬉しいことに毎月一回必ず3人の若者が売り場に顔を出すからか、売り場の女店員さんたちに顔を覚えられ、随分と助けてもらったものだ。

 例えばある日の日曜日に売り場に行くとおなじみの店員さんが笑顔で迎えてくれるだけでなく「○日に招待者販売があるの。その日だと×パーセント安く買えるからその日にしたら? 今日気に入ったものがあったらその日まで保管しておきますよ...」とか「一週間後に社内販売で随分安く買えるから、その日の扱いで取っておくわよ!」などと親切にしてもらった。だから私はいまだに西武百貨店が好きなのだ(笑)。

 

 ところでネクタイはまた柄の選び方だけでなく結び方にも精通しておきたい。一般的には結び目が大きくなるウィンザー・ノット(windsor knot)、一番単純な結び方で結び目が小さくなるプレーン・ノット(plain knot)、そして一般的なエスクワイア・ノット(esquire knot)などという結び方が代表格だそうだが知識としてはもちろん、実際に無難な結び方を短時間にそれも綺麗にできるようにしておきたいものだ。

 せっかくの良いネクタイも使い方によっては生きてこない...。まあ一番難しいのが「着こなし」というものだろうが、こればかりは直ぐには身につかないだろうし多少の時間と努力そしてセンスが必要となるのはご承知の通りである。

 

■現在のこだわり

 ネクタイも一時はやれエルメスだなどと高級ブランド品にあこがれたものの、近年はひとつのブランドに凝っていた。それが「MANHATTANER'S」というブランドである。

 いまも本ブランドは存在するようだがネクタイがあるのかどうかは不明ながら聞いたところによれば、ニューヨーク在住の日本人画家たちの作品世界を商品において表現することを目指すアート・ブランドとのこと。商品は様々な分野のメーカーや企業にライセンス供与することにより展開されてきたそうだ。

 

 私はそのネクタイを始めて見たとき大変気に入り、即数本買ったがその後も病みつきになってしまった。

 一部を除けば、どこかに必ず猫がいるそのデザインの素敵なことは勿論、実際に行ったこともあるニューヨークへの憧れも含め、身につけている自分自身が楽しくなってくる。毎日使うものはこうでなくてはならないと思った…。

 この「MANHATTANER'S」のブランドは食器や前掛け、時計などといった関連商品もあるが最近は残念なことに肝心のネクタイを売り場で見かけなくなってしまった。とはいえすでに私の「MANHATTANER'S」ブランドのネクタイも100本をはるかに越えておりその管理もなかなか大変になっている。

 

 またネクタイはネクタイ以外の転用がなかなか難しいもののひとつだ。しかし以前インターネットで二本のネクタイからオリジナルなベストを作ってくれるというサービスを見つけたので早速頼んでみたが、これがなかなか素敵に仕上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて「MANHATTANER'S」のネクタイがデザイン以外でもユニークなのはデザイン毎に名前がついていることだ。深い意味はないのだろうが何かリトグラフでも眺めているような感覚が生まれるし作者側の意図が伝わってくるようで楽しみである。

 

 ところで「MANHATTANER'S」ブランドの話に終始したが、そういえば一本だけアップルマークのネクタイを所持している。これまた昔、アップル本社に隣接されたアップル・カンパニーショップで購入したものだが、ジーンズ生地に例の6色アップルマークがワンポイントとして刺繍されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■ネクタイの手入れ方法

 まず酷な言い方だがネクタイは消耗品であり、シミが付いたり汚れが付いたりするのは当然だと考えるべきだ。確かに大変気に入っているネクタイがゴミ箱行きとなることは避けたいと同時に代替え品を購入する意味においても懐具合が気になる。しかしもっとも気にしなければならないことはネクタイの汚れを気にし過ぎて年中ガードをしている男の姿は滑稽で格好悪い。

 

 ともかくネクタイは汚れないように注意を払うことは必要だとしてもちょうどそれは乳幼児の涎掛けのように胸元に位置しているものであり、もともと食事中などに汚れるように出来ていると考えた方が精神衛生上よろしいのではないか。

とはいえシルクのネクタイに油性の汚れがついた時は素人処置は止めた方がよい。少々金はかかるが染み抜きの上手なクリーニング店に相談することをお勧めしたい。

 

 またシミや汚れとは別だがネクタイには結び皺がつきものだ。これは手入れと考えてできるだけ自分で対処をしたい。

 一般的にはスチームアイロンをあてるのが良いが、そのままだとネクタイの両端をつぶしてしまいネクタイらしからぬ結果となってしまう。必ず新聞紙を丸めてネクタイの裏から差し込みスチームアイロンを軽くかけるとよい。こうするとネクタイの両端の角もつぶれず、過度な

 水分も新聞紙が吸い取ってくれるので後は陰干しをするだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ただし毎日のこうした処置は正直面倒だから、私は市販のネクタイ専用のプレス機を愛用している。通販で購入した物だが具合もよくなかなかに重宝している。

 

※本稿は2000年にMacFan誌に連載した「松田純一の好物学」の原稿を再編集したものです。

 

 

お気に入りのブランド「MANHATTANER'S」は100本近く集まった

MANHATTANER'Sのネクタイ2本で作ったオリジナルベスト

6色アップルロゴの刺繍があるデニム調ネクタイ

ネクタイは手入れが大切。専用のネクタイプレッサーで小皺を解消

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