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遙かなる記憶

カッパのへーちゃん

ものがない時代、なんでも紙や木で作った。ロボットもロケットもエンジンの仕組みも、そして電池で明かりが灯る灯台も。

しかし小学生のあるとき、クラス会みたいな小規模の催事があり、私は紙芝居をやることになった。

自分で志願したわけでもないから、相変わらず先生に割り振られたのだろう。

 

それは良いとしても問題はその紙芝居を自分で作ってこいという。

要するにオリジナルなストーリーの紙芝居でなければならないという話しだった。

したがってピノキオとか桃太郎といった既存のストーリーではダメだという。

 

小学生の僕には難しい仮題だった。

創造力では負けないつもりでいたが、紙芝居といえばストーリーを考えるだけでなく文字通り絵も描かなくてはならない。

仕方がないのである夜、一杯機嫌の父にその事を相談した。

せめてストーリーでも考えてくれれば絵は何とかなると思った。

 

幸い父は機嫌がよかったし、息子に頼られるのが嬉しかったのかも知れない。

「よし、オトーサンにまかせろ。紙芝居のひとつやふたつ、すぐに作ってやる」

そう意気込む父は早速「画用紙とクレヨンを持ってこい」といった。

 

頼んだ手前、あれこれ注文を出すわけにもいかないし父の機嫌を損ねれば元も子もない。

「ねぇ、何の話しなの」

「教えてよ」

と話しかける僕に「うるさい、任せとけといっただろう」と赤ら顔の父は食卓の上に画用紙を広げた。

 

「ほら、出来たぞ。これは名作だ!」

渡された画用紙数枚の紙芝居のタイトルは「カッパのへーちゃん」とあった。

無論カッパの男の子が主人公だったが、そのタイトルに僕も腰が引けたがダメだしはできなかった。

 

時間も無かったから僕はそのまま「カッパのへーちゃん」の紙芝居を教室で演じた。

絵の裏にどんなストーリーが書かれていたか、まったく覚えていないが、どっちみち酔いに任せて書いたいい加減な物語だったに違いない。

だからなのか、演じた本人にも記憶が無いし、クラスの反応もまったく覚えていない。

父の名作紙芝居「カッパのへーちゃん」はまさしくカッパの屁よろしく消え去った。

 

 

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