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芹△君と手の傷

中学時代の友達で名前を覚えているのは3人だけだ。

芹△君、飯○君そして大□君だ。

残念ながら中学を卒業してからは会ったことはないが中学時代はよい遊び仲間だった。

 

遊びといっても小遣いがあったわけでもないし歳相応の馬鹿話でもして時を潰していたように思う。

お互いの自宅で遊んだり、本の貸し借りをしたりといったことくらいしか覚えていない。

でもお互い、兄弟や両親にも言いづらいことを打ち明けられる仲間だった。

 

そういえば相変わらず良くも悪くも目立たない子供だったし奥手の僕にも初めてクラスの女の子の一人が眩しく思えたことを覚えている。

いまクラス全員の集合写真を見てもその子の容姿は抜きんでている。

勿論声をかけたとか告白したといった話しではなく、単に雲の上の存在として遠くから眩しく眺めていただけだった。

 

そんなとき友達の芹△君に異変が起こった。

ある朝、左手の甲に包帯をぐるぐると巻いて登校したのだ。

かなり痛そうだった。

僕らは「どうしたの?怪我でもしたの?」と聞くが彼はどうしたことか無言だった。

 

どうしても包帯している理由を教えてくれないまま半月ほど過ぎたある日、飯○君から衝撃的な話しを聞いた。

無論それは芹△君の包帯の原因についてだった。

芹沢君は好きな女の子ができたのだという。

それは年頃の男の子にとって珍しいことではなかったが、彼もシャイでナイーブな子だった。

だから告白するなど夢の又夢だったようだ。

 

しかし思いはつのるばかり。

そこで彼は鉛筆を削るボンナイフで自分の左手の甲に彼女の名前を彫った(切った)のだ。

すっかり傷跡も盛り上がった頃にやっとその傷が誰の名前であったかを知った。

ただしボンナイフで切ったとはいえ僕の第一印象は「へたくそな文字だ」という感想だった。

それにしても僕自身もよくわからなかったものの大人しい少年に、理性を失わせて思いもかけない行動をとらせるほど "恋" というものの怖さを知ったような出来事だった。

 

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