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閻魔大王の冠

アパートの裏は墓地だった。

周囲は戦後の混乱期だったからまだまだ空き地も多かったし雑林もあって遊び場には不自由しなかったが墓地は別格だった。

なぜって墓石やら石像が沢山あり、隠れん坊や鬼ごっこに最適だったからだ。

 

墓石はともかく、さまざまな石像がなんのためにあるのかなど僕たちは気にも留めなかったし大人たちも知らなかったのではないか。

それでも大人たちの一番人気は閻魔大王の石像だった。

 

炎天下で見る閻魔様は立派ではあったが少しも怖くはなかったから僕たちは閻魔様の肩に腕を回して遊んだ。

大人たちはもっと罰当たりだった。

閻魔様の頭上にある冠が灰皿にちょうどよいと皆がタバコの灰を落とし、閻魔様の頭で火を消していた。

僕はもっぱら観音様といわれていた石像が好きだったしその光背は隠れるのにも最適だった。

だからいつも隠れん坊をやってもすぐに見つかってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし日が暮れると墓地の風景は一変した。

夜になれば誰一人墓地に入ろうなどと思う住人はいなかったし共同トイレにいくとき、

割れたガラス窓からちらりと見える墓石の数々は別世界であり怖かった。

 

あるときアパートの大人や年長者たちが中心になって肝試しが行われた。

昼間に閻魔様の王冠に置いたお手玉を取ってくるのがミッションだった。

無論僕たち子供が参加するはずもなかったが、

真夜中に閻魔様の前までいく勇気は誰も持ってはいなかったらしい。

特に昼間、閻魔様の冠を灰皿代わりに使っていた罰当たりの大人たちは...。

お手玉は日が昇るまでそこにあったという。

 

 

墓地の一角にあったお気に入りの石像。中央が筆者

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