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起業前夜〜初めてのアメリカ旅行/ACM SIGGRAPH '87 見学記

私にとってSIGGRAPHに参加したことはその後の起業への意欲やMacintoshによるグラフィックの理解に多大なる貢献をしてくれた人生の重要なターニングポイントだった。今回は少々寄り道になるがこのSIGGRAPHの感想や印象を当時(1987年)の「98マガジン」10月号に寄稿したデータがあるので初公開の写真を交えてご紹介したい。なお勘違いや間違いもあるかも知れないが当時の原稿のままご覧いただく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    例年アメリカで開催されているSIGGRAPHは、2日間にわたる講義と3日間で合計30以上にもなる講演、研究発表、そして最新のCG(コンピュ一タグラフィック)機器の展示、デモンストレーション、さらにフィルムビデオショ一、アートショーから構成されている世界最大のCG分野のイべントです。今年はロサンゼルス郊外のアナハイム(ディズニーランドに隣接)において7月27日から31日の5日間開催されました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

CGに興味を持ち、実際にパソコンを使って工夫している者にとって是非一度は行ってみたいと考えていたので、清水の舞台から10回位飛び降りたつもりで7月27日に成田を出発しました。SIGGRAPH は本来Association for Computing Machinery's というコンピュ一夕に関する専門家の集まり、つまり学会でありその中のSpecial Interest Group on Computer Graphicsが主催する国際会議で、今回は第14回目になります。

 

したがって本来は私などがのこのこと見に行こうという代物ではないわけですが、近年CGを啓蒙するために企画されたCGアニメーションらが企業利用(コマーシャルなど)の分野で評判になり大勢の人が集まるようになりました。

大勢の人間が集まるところには企業も宣伝のために金を出し、展示もし、というわけで年々その規模が大きくなっています。

 

会場はアナハイムのコンベンションセンターで行われ、ホ一ルと呼ばれる、三つの会場を使っての機器展示、ARENAという円形の会場でフィルム・アンド・ビデオシヨ一を開催しました。その他PacificRoomでのCourseと呼ぶ教育.セミナ一、OrangeCountyRoomでのアートショ一があります。

 

27日の夕刻にディズニーランドホテルの隣にあるエメラルド・オブ・アナハイムホテルにチェックインした私たちは、翌日の朝から時差ぼけも忘れてホテルから歩いて10分ほどにあるコンベンション・センターへと急ぎました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会場で登録を済ませた後、三つの広い会場に展示されているCG専用機や関連機器を驚異の目で見て行きます。パソコン上での画像移動に時間がかかるのを日々体験しているので、リアル夕イムにそしてスムーズにCRT上の画像が動くのには、当然のこととは知りつっも溜息が出てしまいます。

 

事前にどの様な企業が出展するのかを確かめもせずに出発しましたが、パソコンCGの動向に、直接影響を与えるであろうCG専用機の現状を見てこようというのが私の目的だったのです。しかし思わぬことに、展示会場にアップル社とコモドール社が、それぞれかなりのスペースのブースを確保し展示を行っていたのには驚喜しました。

 

そのアップル社ですが、Macintosh II と SuperMACというSuperMac Technology社の19インチカラーモニターをつなげて色々なアプリケーションのデモを行っていました。例の貿易摩擦の関係からか、SONYのOEMといわれる純正カラーモニタはほんの2, 3台しかなかったと記憶しています。

 

各アプリケーションソフトとして目新しいものはなかったのですが、VideoWorksII、CricketDRAWのカラーデモ、そしてツールパレットの数カ所にマスクがかかっていて、未完成ながらきれいな色彩を表示していたカラーMacPaint (後でPixelPaintだとわかった) などが目を引きました。

いろいろと質問もしたかったのですが、私の会話能力は皆無に等しく「写真を撮ってよろしいか」、「カタログは有るや無しや」くらいしか意志表示が出来ないのが何ともやりきれなく、自己嫌悪に陥りそう。

 

手にはカタログの入ったバッグと手帳を抱え、首からは力メラをぶら下げてという典型的な日本人が金髮美女(•••でない人も沢山いたが、私は美人にしか物を尋ねない性格です。ちなみにTOSHIBAの受付嬢が会場一の美人でした)のコンパニオンに訳のわからないことを言っている姿は、自分で考えても喷飯ものです。また別のComputer Friends社のブースでは、Macintosh Plusをカラー化するSuperChroma、そしてMacintosh II のペイントプログラムであるModern Artistをデモっており、相当な人だかりでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのModern Artist なるペイントソフトは、MacintoshのスタンダードになりつつあるPICTファイルをサポートし、MacPaintファイルをコンバートする機能、Shinko200dpiプリンタドライバを備えていること、そして550万色から任意の256色を選ぶことができることなどが注目をあびていました。これらのカラーグラフィックソフトを見てて嬉しく感じたのは、その機能はもとよりその価格です。当初Macintosh II クラスのカラーグラフィックソフトは、例えば$300や$500くらいの物が多く出るのではないかと危惧していたのですが、意外なことにModern Artistは $149 だそうで大変嬉しく思いました。

 

変わったものとしては、VPL-Reseach社という会社が展示を行っていたDATAGLOVE Model-2があります。これは専用のインターフェースに接続された専用の手袋をオペレータ の手にかぶせ、手の指を含めた動作を Macintosh上でリアルタイムに再現しようというものです。また同ブースでは立体の物体をトレースしてMacintosh上で3D表示する3Dテジタイザのデモも行っていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

対してコモドールのブースではAMIGA2000を大量に展示しTechnologyCAD、Desktop Publishing、Personal Graphicsなどの分野別にコーナ一を設けてデモっていました。このコモド—ルのブースも相当な人だかりで大変な込みようでしたが、DigiViewという$199.95の安価なカラービデオ入力装置とサンプリングした音声を使って作成した女性が喋るアニメーションが好評のようでした。

 

機器展のトータルな感想は、CG専用機を含めて一層の美しいカラー画像が得られたために、そのハードコピーをいかに考えるかに重点がおかれるようになってきたということです。その証拠に、カラースライドに仕上げる機器はもちろん、各社が熱転写方式を初めとした高解像度カラープリンタを展示し、その高性能ぶりを誇っていました。しかしその高価な価格も問題なら、そのブリントアウトの仕上がり具合いも画面の美しさにはまだまだ程遠く、ビデオに落とすかスライドにするかが現実的な方法だと感じました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

28日から30日の3日間の夜8時からは、待望のFilm and Video Showが開催されるので、その初日を見てきました。三つの大きな展示会場の隣にある円形ホールで開催されたのですが、早めに行ったつもりなのに200mくらいは列ばされての入場でした。そのためか1,2階席は座れずに3階席になりましたが、会場正面のスクリーンに対してはまあまあの席となりました。

 

正面スクリーンは3つ横に並んでいて、その左右にはFilm and Video Showが始まる時間までのタィムが減算されて表示され、スペースシャトルの発射を思わせる演出で’’00:00:00" になったらスタートというわけです。

1分30秒くらい前になると会場の誰からともなく "秒" に調子を合わせて手拍子が沸き起こり、だんだんそれが大きくなっていきます。まるでフットボールの試合でも始まるのではないかと錯錯するほどの熱狂ぶりです。そして "0" になった途端の口笛ラッシユのものすごさ。当然、そんなのりにはなかなか乘れない私は、アメリカ人の性格が羨ましいほどでした。

 

次々にCG専用機(パソコンでの作品もありましたが) で作られたCGアニメーションが投影されていきますが、それに対する反応もオーバーと思われる程です。ただし、良いものとそうでなものをはっきりと意志表示するという点は大いに見習わなければならないでしょう。

 

内容の傾向としては、全体的にストーリー性のあるものに人気がありPIXARの"RED DREAM"という、一輪車が主人公のアニメなどはもう映画の世界そのままでした。また日本勢の代表であるJCGL、TOYOLINKS、LINKSのメタボールを駆使した河口洋一郎などの作品にも惜しみない拍手が送られました。そして "BOOM BOOM BOOM" と題する花火のシミュレーションを最後に文字通り打ち上げとなったのでした。

 

感心したのは、CG作品とともに演じられる音楽です。これは単なるBGMを越えた素晴らしいものが多く、したがってオリジナルな作品も多かったようです。映像の表現に音楽がいかに重要であるかをあらためて思い知らされた一夜でもありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてこのCG作品の中にも使われいた、1980年前半の名機であるDEC社のVAX-11/780の演算スピードは1MIPS くらいだったと思います。MIPSとは、コンピュータの処理速度の指標ですが、1秒間に百万回の命令を実行できることを1MIPSというわけです。

 

それに比較してMacintoshIIやSONYのNEWSなどは、2MIPSの実力を持っているしPC-9801のVシリーズなどでも0.5MIPS程度の実行速度は期待できるのではないかと思われる昨今、ハ一ドに恵まれていないから良いCGができないなどという言い訳は全く通用しなくなってしまったと言えるでしょう。これからは一人一人に真に個性的な創造性を求められる時代になってきたと感じました。

 

この原稿をワープロで入力していた今日、私のコンピュータルームにも待望のMacintosh ll が届きました。40MBのハードディスクを装備し、内蔵RAMを5MBに拡張したカラ一マシンです。

SIGGRAPHが私にもたらしてくれたものがあるとすれば、それらが真に発酵し開花するのはいつのことになるのか、スーパーパソコンを前にして我ながら深く考え込んでしまいました。

 

(完)

 

1987年発行の「98マガジン」10月号
SIGGRAPHの参加登録会場

SIGGRAPHの参加登録会場

宿泊先のエメラルド・オブ・アナハイムホテル

宿泊先のエメラルド・オブ・アナハイムホテル

カラーペイントソフト Modern Artistブース

カラーペイントソフト Modern Artistブース

DATAGLOVE のデモ
3Dテジタイザのデモ

DATAGLOVE のデモ(上)と3Dテジタイザのデモ(下)

隣接の本場ディズニーランドにも立ち寄った。裕之姫のパレード

隣接の本場ディズニーランドにも立ち寄った

ホテルに戻り記録を整理する筆者

ホテルに戻り記録を整理する筆者

1987年発行の「98マガジン」10月号

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