External links

第2回、マルチメディア国際会議出展の思い出

起業の翌年である1990年は実に忙しくもエキサイティングなことばかりだった。VideMagicianに関してはMacintosh関連の雑誌だけでなく多くの取材申込みがありその対応に追われていた。一番驚いたことは長い間MACLIFE誌のライターをやり、数冊の単行本を書いたこと、そしてなによりもNIFTY-ServeのMACCGフォーラムシスオペといったことから我々の企業名はご存じなくとも私の名前をよく見知っていただけたことだ。

 

初対面の方と名刺交換すると「あっ、失礼ですがMACCGのシスオペの松田さんですか?」といった例が多く、その後の話しがとてもスムーズに進んだ。それに当時はMacintosh専門のソフトハウスなど他に存在しなかったから宣伝も広告もしなかったものの国内有数のメーカー各社からのコンタクトも相次いだ。それにアップルジャパンの営業担当に頼まれ、東京丸の内界隈の大手企業の役員クラスにMacintoshの最新テクノロジーをプレゼンすることもやらされたし、キヤノン販売の札幌支店からの依頼で北海道から広島あたりまで全国各地でセミナーや講演あるいは実演をするために私は飛び回るはめとなった。

 

前回ご紹介したが1990年1月、すなわち事実上事務所を開設して3ヶ月にも経っていない時期に早くも港区三田にあったキヤノン販売と取引基本契約書を締結することになったし、同年11月3日には早くも品川のソニー本社に招かれ、ショールームや最新のテクノロジーに関する展示などを見せていただいたが、ソニーともその後親密な関係を継続していくことになる。

 

そう、VideoMagicianで印象的な思い出がある。それは1990年5月のビジネスショウにおける評判を受けアップルジャパンから10月に幕張メッセで開催される第2回「マルチメディア国際会議 ’90」に出展して欲しいという依頼があった。アップルブースの一画を私たちに無料で提供してくれるというので喜んで依頼を受けたが、私の役目はいかにしてVideoMagicianという先進的なアプリケーションをユーザーの身近な問題解決に寄与できるかを提示することだった。

 

小難しいテクノロジーやデジタルビデオの話しをしても一般のお客様には受けないからだ。そこでHyperCardとそのXCMD(外部コマンド)を駆使して一目でその魅力を分かっていただけるサンプルを作ることを考えた。

結局鳥の映像が収録されているレーザーディスクを手に入れ、その発売元に展示会のみ使用可という許可をいただきVideoMagicianによる「デジタル鳥類図鑑」を作ったのである。

 

それはHyperCardで作ったスタック画面に「アカショウビン」「カワセミ」といった十種ほどの鳥の名を記したボタンを並べ、そのボタンをクリックすると上部のウィンドウ内にその鳥の動画映像が表示し、羽ばたいたり飛んだりしながら鳴き声も聞こえるという代物だった。そのカラー映像は当然前記したレーザーディスクからVideoMagicianを使い私自身がデジタル化したものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無論その鳥類図鑑はひとつの例であり、別途作ったのはサンフランシスコ市内の地図上のポイントをクリックするとその映像(動画)がサウンドと共にポップアップする「デジタル観光案内」といったものだった。動画はこれまた私自身がサンフランシスコに行った際に撮り溜めたものだったが、要はこうしたインタラクティブな類のコンテンツが工夫次第で簡単に作れるということを示したわけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その鳥類図鑑や観光案内のサンプルはVideoMagicianとHyperCardの組み合わせがいかに最強のマルチメディアツールであるかを如実に物語るサンプルとして好評を博したが、10月9日その小さなブースにあのビル・アトキンソンが覗きに来た。彼は派手な横縞のTシャツを着てラフな格好だったがなかなか神経の細やかな暖かい人だった。

 

我々はアトキンソンがHyperCardの開発者でもあるからとVideoMagicianIIのデータをHyperCardから使用するところを説明していた時、アップルの関係者が急ぐらしくアトキンソンの袖をひっぱるようにして連れて行った。しかし少し離れたところから体を反転させ後戻りし我々に礼を言ってくれたのには感激...。

 

さらに印象深かったのはマイクロソフト社会長ビル・ゲイツ氏が立ち寄ったことだった。彼は「マルチメディア国際会議 ’90」のキーノートスピーチを行うために来日していたわけだが、何とも複雑な表情で我々のデモを見ていたという。

それは何故なのかは後で知ったが、ビル・ゲイツがキーノートスピーチで提示したマルチメディアの最新テクノロジーとしてのプレゼンも実は我々と同じく鳥類図鑑だったのだ(笑)。

 

ただし決定的な違いがあった…。それは生まれたばかりの超マイクロ企業のコーシングラフィックシステムズが示した鳥類図鑑は前記したようにリアルなカラー動画と音声で構成されていたにもかかわらず、マイクロソフト社のそれは鳴き声は出るものの映像は写真...すなわち静止画だったのである。

 

無論その時代はビデオ映像をデジタル化し、それをパソコンで再生して見せるというコンシューマー向けの環境が無かったことの証明でもあるが、それを聞いて世界最小のソフトハウスが世界最大のソフトウェア会社であるマイクロソフト社に一矢報いた思いがして我々は小躍りして喜んだことは懐かしい思い出だ。

 

とはいえ1990年に開発したパッケージソフトはVideoMagicianだけではない。DTPやデザイン指向でMacintoshを活用しようとする試みが急速に増え、それと連動するように500万円以上もするキヤノンのPIXEL Dioもコンピュータインタフェースを有していることからMacintoshでコントロールすべきアプリの開発依頼があった。その辺の事情は美術出版社刊「デザインの現場」1990 VOL.7 NO.45に詳しいが、この時期特有の危なげなビジネス例も多々経験した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その一例として東京池袋に本社があった東京ユニテック社にからむ事例は忘れられない。

同社はパスカルというMacintoshのショップを運営し、ユーザー目線で躍進を続けていた企業だったがワコム製のタブレットをいち早くMacintoshで使うインターフェースとドライバを開発してみたりと積極的に未来への投資をも続けていた。

同社の青山社長からはこれまた積極的なアプローチがあり、数件の開発依頼を請け負っていた我々だが、ある日のことカラースキャニングソフト「ColorMagician」の米国向け独占販売権を欲しいという依頼があった…。

 

 

VideoMagicianで作ったデジタルビデオをHyperCard上で利用するXCMD(外部コマンド)により、地図上のポイントをクリックするとその場所の動画がポップアップする「デジタル観光案内」

美術出版社刊「デザインの現場」1990年12月号。私も用語解説を担当し、コラムでは坂村健氏および布施英利氏らと名を連ねている

VideoMagicianとHyperCard & XCMDで作ったデジタル鳥類図鑑

・記載の製品名、企業名などはそれぞれ各社の登録商標または商標です。
・記載する情報の正確さならびに安全性について、当サイトは保証いたしません。
・特に明記のない場合の転載はご自由ですが、出所出典および当サイトのURLを明記してください。

© 2003 - 2017 Macテクノロジー研究所