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他社製アプリケーションの改変依頼が結構あった...

パーソナルコンピュータそのものはもとより、それにインストールして使うソフトウェアという代物は黎明期のユーザーにとって概念すら思い浮かばないブラックボックスであり得体の知れない製品だったようである。したがって現在ではお目にかかれない様々な珍事に恵まれた?が、当時は理解して貰うために必死であり笑い事ではなかった。

 

あるときのこと、電話を取ったスタッフから「松田さん、おかしな依頼事のようなんですが代わってもらえませんか」と言われた。まあ、我々の会社が開発したアプリケーションのユーザーサポートでも微細な点の質問だとスタッフの手に負えないこともあるわけで、私は気楽に電話を代わった…。

 

電話口の相手はどうやら我々のユーザーではないらしい。声の様子では中年の男性のように思えるが、しつかりとした物言いながらどこか押しつけがましいニュアンスも感じられる話し方だった。

あらためて私が会社の代表者である旨を伝え、詳しいお話しを聞かせてくださいというと多少改まった感じになった。こちらとしては「私が社長だが、なにか?」といった上から目線のつもりで職責を言ったわけではない。

 

経験上、年配者からのこうした電話で話をスムーズにそして穏便に進めるにはこちらが社長であり会社の最高責任者であることを知らしめることで相手の心づもりが明確になることがあるからだ。そして本来はおかしなことだが、社長だというだけで対応が穏便になるという事例も多いからだが、今回の相手も「ああ、社長さんですか…」とどこか口調に柔らかさを感じるようになった。

 

話しはこんな感じで進んだ…。

「おたくはパソコンのソフトウェアという物を開発している会社だと聞いたが」

「はい、米国のアップルという会社のパソコン用ソフトウェアを開発しています」

「ということはソフトウェア開発はお手の物だね」

「そう考えていただいて間違いありませんが、仕事となれば契約条件にもよりますし当社では手に余る事例もありえます」

 

こう釘を刺しておく…。

時に個人で「こうしたアプリを作って欲しい」という依頼が持ち込まれることもあったが、予算的に最低数百万円はかかると説明すると怒って電話を切る人もいたからだ(笑)。ソフトウェアというものが、誰によってどのように、そしてどの程度の期間をかけて開発される物なのか…といった我々からすれば当たり前のことにそうした人たちは想像だにしないのだ。

知らない事は恥ではないが、知ろうとしないばかりかソフトウェアというものはハードウェアに付属する物でオマケであるべきと思い込んでいる人もいるのだから始末が悪い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話しを戻すが、電話の向こうの男性は「○○社の△△というソフトを知っている?」と聞く。当時はまずまずポピュラーなソフトウェアだったから私も使った事があると返事をすると「それなら都合が良い。そのソフトを日本語化してさらにいくつか機能を付け加えて欲しいんだ」と言う。まあまあ著作権といった初歩も思い浮かばない人のようで厄介だなと思いながら「それは出来ないご相談です」と答えた。

 

その△△というMac用アプリケーションは米国の××という会社が開発した製品だからして、××社の著作物であり許諾を得ずして改変できない、法を犯すことになる…お金の問題ではない…ということを説明しつつ、もしどうしても実現したいならそのメーカーに直接依頼してみたらどうかと話した。

 

「はい分かりました」とすぐに納得する人ではないとは分かっていたが、繰り返しの問答が続いた後、怒ったように電話を切った。

そういえばどこの誰かという点を聞いておかなかったのは私の手落ちだったが、しばらく経って周知のデベロッパー数社の代表者らが集まったとき、そんな話しをしたら同一人物かは不明ながら皆さん同じような依頼で困った事案があったようだ。

 

そういえばスティーブ・ジョブズの友人でもあったオラクルの創業者ラリー・エリソンはドキュメンタリー「シリコンバレーの百年」で自分の体験を語っている。それは創業直前にいくつかの投資家を探していたが、ソフトウェアと聞くと会ってもくれなかったという。さらに応接室から退出時にそこに置かれていた雑誌を盗んでいないかと調べられたこともあったという。結局エリソンは投資家を頼らず自己資金で会社を創立する…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時代とはいえ、コンピュータの本場米国でさえソフトウェアの価値は低く見られていた好例だ。「パソコン、ソフトなければただの箱」といった話しもあるものの、いまだにソフトウェアへの理解というか、価値に対する認知度は一般的に低いように思える。

 

 

 

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